研究概要 |
本研究では, 臨海型高密度都市域での代表的な災害の一つと考えられる津波災害について検討した. 高密度臨海都市域の代表例として東京湾沿岸をとりあげ, 津波伝幡の数値シミュレーションを行なった. まず過去に東京湾に津波被害をもたらした元禄地震と関東地震の波源域モデルを用いて津波の初期水位を計算した. そして底面摩擦項と移流項を両方とも含む基礎方程式系を用いて津波の伝幡計算を行なった. 計算に際しては, 東京湾や13号埋立地などの特に重要と考えられる地域では差分格子を細かくして精密な計算を行なった. その結果, 湾内の最大水位は沿岸部の既存の防波堤天端高さに比べて低いためあまり問題とはならないものの, 流速については特に浦賀水道付近で2m/s程度の大きな流れが, 地震発生後2時間余り継続することがわかった. 浦賀水道は東京湾における重要な航路となっており, 船舶は輻輳状況にある. そこで, 津波流動による最大流速の分布図と船舶航路の重合状態を示す分布図とを比較し, さらに流速の時間的な変化も合わせて検討したところ, 地震時の航行管制に対して特に細かい検討が必要であることがわかった. この他に, 湾内泊地における流速, 東京湾・13号埋立地周辺での流れの時間変化を計算し, 当該地域の現行利用状況と比較して災害対策の必要度を考察した. 次に, 津波が会場交通に及ぼす影響が重要であるという上記の結果に基づき, 室内二次元造水路を用いた実験により, 段波状で進行する津波の内部流速場と波圧を詳細に測定した. 日本海中部地震津波による被災例で示されたように, 特に構造物や航行船舶に対する衝撃圧力については段波状となって進行する津波に対する検討が必要である. 広範な条件に対して水理実験を行なった結果, 段波前面に強い乱れの領域が存在し, 津波の衝撃波圧もこの部分で最大となることがわかった.
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