研究概要 |
本研究では, 豪雨による人工斜面の崩壊特性を明らかにし, その発生予測法を確立することを目的として, 昭和60年6月の梅雨前線性豪雨によって岡山県内に発生した土砂災害の実態調査結果をもとに, 降雨形態と斜面崩壊の関連ならびに崩壊発生予測手法について検討した. さらに, 斜面崩壊の直接的原因となる斜面内の水の流動特性を数値解析するとともに, 土粒子の移動限界との関連について考察した. その結果得られた成果は以下のとおりである. (1)実態調査結果より, 人工斜面の崩壊規模は幅・高さともに, 15m未満のものが多く, 崩壊深さは1m程度で比較的浅く, また, 傾斜角30°以上の急斜面で発生し, とくに切土斜面の崩壊が顕著であることが明らかにされた. (2)崩壊発生箇所の地域分布は, それらの崩壊が集中して発生した時刻からさかのぼって12時間前からの累積雨量が70〜80mmに達する地域とよく一致する. (3)崩壊発生前12時間以内には10mm/hr以上の降雨を経験している. しかし, 長時間降雨があった場合の危険雨量の目安とされる20mm/hrを経験していない崩壊が調査対象総件数(176件)の半数近くに及ぶ. また, 崩壊発生時の降雨強度は0〜10mm/hr程度と比較的小さい. (4)実効雨量法において, 適中率を100%とした場合, 限界実効雨量を50〜60mm, 半減期を12時間とすると, 今回対象とした災害は, 超過生起率0.1〜0.2, 超過発生率0.2〜0.3で予測できることが示された. さらに, この手法を用いて, 崩壊発生予報システムについて検討し, 当地域における予報のための基準実効雨量値が示された. (5)地盤内浸透流と土粒子の移動限界との関係が,土質特性との関連で明らかにされた.
|