研究概要 |
都市農業を我々は以下の三つの視点から捉え, 都市農家は"農のある街づくり"の担い手として, 都市社会の中で不可欠な存在であることを明らかにした. (1)農業生産からの視点, (2)都市環境整備からの視点, (3)都市農家の土地所有構造からの視点である. (1)については, 軟弱野菜経営を典型とする高収益経営が市街地に立地していること. また, 都市生活に重要な位置をもつことなど, 従来にも増してその役割が期待されていることを明きらかにした. (2)については, 都市農地の緑地空間などの非農業生産的機能に着目したものであり自然環境保全機能, アメニティ維持機能である. 本来, 都市農地や丘陵地・平地林がもっていたそのような機能が無秩序な宅地化によって破壊され, 都市における水害や土砂崩壊などの環境問題が発生していることを指摘した. (3)については, 従来見落されてきた視点である. 都市農業の担い手である都市農家は, 農地の所有者であるだけでなくアパート・貸家などの不動産経営者でもある. 大都市の農家は戦前から戦後, とくに昭和40年代半ばにおいて農地と宅地の多面的土地経営構造を確立している. 都市農家は民間借家の建築, 供給を通して都市の一翼を担ってきたといえるのである. ちなみに, 昭和50年の経営で, 民営借家のうちどのくらいが農家によって供給されているかという点についての我々の試算結果では, 全国段階で37%, 三鷹市29%, 仙台市23%などの数字が得られている. このような農家の多面的土地利用構造を都市社会の中でどのように計画的かつ合理的に評価・位置づけていくかが, これから各地でとりくまれるであろう"農のある街づくり"の課題である.
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