研究概要 |
日本が置かれている気候的あるいは地理的環境は, グローバルスケールで大気汚染物質の拡散を考える上で重要な要素である. 黄砂は, 必ずしも汚染物質と同一には扱えないが, 汚染物質が, 組織だった季節風のもとで広域拡散するときの状況, 活発な輸送高度の存在, 等々について極めて有用な情報を与えてくれる. 本年度の研究は, レーザレーダを中心に黄砂粒子の飛来高度をモニターし, 種々の気象要素を考慮して, 東アジアから太平洋にかけての大気中での物質の拡散状況を知ることである. 他のひとつの目的は, 黄砂粒子をテスト粒子にして, 大気中の酸性物質と粒子状物質との関係を知らべることである. 1.レーザレーダ観測を, 名古屋大学と国立公害研究所で行った. 天候の都合で同時に観測出来た日は少ないが, 気象条件を加味して検討すると, 西から東へ移動しつつ黄砂層がひろがり, 中心が時には下降しているように見える例がある. 小規模の乱流や重力によって少しづつ粒子が下方へ移動していることを示しているだろう. 2.航空気による黄砂粒子の採集では, 黄砂粒子が表面に液体(場合によっては硫酸イオンを含む)をつけているものがしばしば採集されている. 大気中を漂っている間にNO_xやSO_xを吸着吸収した可能性も高い. 今後, 表面で生じている反応を明らかにするとともに, 酸性降下物の降下に黄砂がどのような役目をはたしているか明らかにする必要がある.
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