研究概要 |
本研究の目的は, とくに都市圏において環境上最も重要な課題である交通公害の問題をとりあげ, 幹線道路周辺における交通公害の影響度評価や道路建設の環境影響評価に関して, 〈1〉道路から地域住民への影響度評価, 〈2〉地域住民と受益者の意識構造の計量的モデル化, 〈3〉利害の対立した両グループの意識構造の集約化, などを通じて両者の意識を公正に反映した意思決定支援システムを開発し, ひいては調和のとれた都市環境の創造に寄与することにある. 本年度はこの目的にそって次の研究を実施した. 1.道路からの物理的な影響度を把握する方法論の整備 沿道における物理的な影響を把握する手法として, 大気汚染拡散モデル, 騒音予測モデル, 振動予測モデルについて, これまでに筆者らが開発してきたモデルを中心にして, そのシミュレーションシステムの整備・拡充を行った. 2.住民アンケート調査に基づく心理的影響距離の把握 物理的な影響度(汚染データ)と心理的影響度との関係を解析し, さらに影響の総合評価関数としての道路からの心理的影響距離と物理的な影響度との関係を求めるために, 住民アンケート調査を実施した. 対象道路は大阪外環状線(平面6車線), 対象地域は東大阪市昭和町及び布市町とし, 対象道路から250mの範囲に居住する約200世帯の住民を対象にした. ここで, 道路の利便性を求める人とそうでない人とでは, 道路の影響に対する考え方が異るものと考えられるため, 地域要因, 世帯要因, 個人要因などに基づいて対象者のグループ分けを行い, グループ毎に解析した.
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