研究概要 |
1.土壌中Sb, Biの分布と挙動 日本各地の重金属汚染地12ケ所の土壌中SbおよびSbと性質が似ているBiの濃度を測定した. Sb製錬を行っていた米原の工場周辺土壌ではSbが最高値136μg/gと非常に高濃度であったが, Bi濃度は比較的低かった. これに対しBi製錬を行っていた北海道国富土壌ではBiが最高値122μg/gで非常に高濃度であり, Sbも最高値37.3μg/g高濃度であった. また亜鉛製錬によってCd, Zn, Pbの汚染が知られている長崎県対島の土壌でもかなり高いSbが検出された. その他のCd等重金属汚染土壌においてもSb, Bi濃度は自然界値と比較して高く, Cd等重金属の汚染と同時にSb, Biによっても汚染されていることが認められた. これらの汚染土壌のうち群馬県安中水田土壌について詳細な検討を行った. Sb, Bi濃度は製錬所煙突から1km以内で高く, 離れるにしたがい低下した. Sb濃度は6km以上で, Bi濃度は3km以上でほぼ自然界値となった. 各金属間の相関係数を求めたところ, いずれの金属間も0.1%レベルで有意であった. その中でもSbとPb, BiとPbとの相関が高く, ついでSbとCd, BiとCdであった. したがってPb, CdとSb, Biの挙動が類似していると推察された. また層位別濃度を調べたところ, Cd, Znは第4層まで, Pb, Cu, Sb, Biは第2層まで汚染されていた. この様に土壌の垂直分布でもSb, BiはPbと類似しており, この点からもSi, Biは土壌中で, Pbと類似の分布と挙動をしていると考えられた. 2.河川底質中のSbとBi 製錬所排水の流入する河川底質を北海道国富, 茨城県七会で採取した. 土壌に較べ高濃度のSb, Biが検出された. 3.土壌中Tlの定量法 土壌分解液にクエン酸とアスコルビン酸を添加溶解後, NaOH溶液を滴下したpH10.5に調節し, 分液ロートに移しDDTC溶液を加え, MIBKをTlを抽出し, 原子吸光法により定量する方法をほぼ確立した.
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