研究概要 |
土壌より分離しCorynebacterium sp.と同定したNo.8株は, グルコースの存在下でo-, m-, p-クロロフェノールよリ80-90%の塩素を脱離する. 1.培養法による脱塩素 本菌は15種の各種芳香族塩素化合ものうち, モノクロロフェノールより脱塩素を行うが, ジクロロフェノールには作用しない 2.休止菌体を用いる脱塩素 ブイヨン培地に生育した菌体を用いてクロロフェノールの脱塩素を検討した結果, 補助基質として酢酸, プロピオン酸, 酪酸を添加するとo-およびp-クロロフェノールよりそれぞれ98%, 80%の塩基が脱離した. この方法では反応時間が培養法により著しく短縮され, 48時間で脱塩素反応はほヾ完成した. 3.反応生成物(中間体)の単離と同定 休止菌体を使用してo-クロロフェノールからの反応生成物をTLCで検出し, それを単離同定して脱塩素反応を確認することを試みた. 反応液を逐次TLCで展開すると, 新しいスポットが検出され, 48時間後には消失する. これを反応の中間体と想定し, 単離を試みた. すなわち, 1lの反応液より, 本スポットを単離し, 単一物質であることを確認後, 質量分析, 赤外分析, 核磁気共鳴等の手法により同定した. 質量スペクトル分析の結果, 分子イオンピーク(M)は144, M+2のピークが親ピーク(M-36)の1/3あり, M-36のピークの存在よりこの物質は塩素を含んでおり, 分子量144はクロロフェノールの分子量128より16増加している. 従って本物質はクロロフェノールが未だ塩素を脱離せず, 酸素が分子付加されたものと指定した. IR, NMR分析の結果, 本物質を3-クロロカテコールと同定した. 同様にしてP-クロロフェノールの代謝の中間体として4-クロロカテコールと単離した. 従って本菌の休止菌体による脱塩素反応はまず酸素が添加された後に開環, 脱塩素が起ると考えた.
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