研究概要 |
多品種少量生産は, 小口多頻度, ジャストインタイム, リードタイムの短縮という物流ニーズの質的変化を要請し, サービス, コスト, 環境の間に矛盾を生じさせているため, これら三者のトレードオフを明らかにし, 新しい社会的な物流システムを構築し, その効果及び環境インパクトを予測することが本研究の目的である. 都市内配送についてロジスティックス費用とサービス水準のトレードオフを表わす分析モデルを開発した. ロジスティックス費用は, 輸送費と在庫費用の和であり, サービス水準はリードタイムとする. また, ジャストインタイム輸送については, 配送後にデポにもどってくる帰着指定時刻に対する遅刻確率によって輸送行動を評価する. 仙台市東部の卸商団地に立地する食料品卸売業について, 上述のモデルを適用した. その結果, 都心部のサブ地区での配送はロジスティックス費用最小化で説明できるけれども, 周辺部のサブ地区では費用最小化よりも短いリードタイムを提供していることが明らかになった. まだ, デポ帰着指定時刻に対しては平均15%の遅刻リスクを受容していた. このようなジャストインタイム流通の普及のもとでは, 都市物流システムは, (1)物流施設の集団化・拠点化, (2)トラックの駐停車, 時間調整, あるいは沿道環境保全のための施設整備, (3)道路交通情報の提供, (4)配送トラックの径路誘導, という4つのもので構成されるのが望ましい. 現在のところ, 都市物流システムを構築した場合の効果及び環境インパクトを精度よく予測できるモデルは存在しない. そこで, 上述のロジスティックスの考え方を織りこんでクレートをトリップに転換するトラック交通量予測モデルが必要であり, トリップチェイン, 非集計モデル等について検討を進めている.
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