研究概要 |
今年度は, (1)屈折率勾配で表した火炎内乱れを実験的に評価するために, 火炎内乱れの測定法およびデータ解析法を確立し, それと並行して, (2)乱流火炎モデルの基礎となるべき層流火炎に対する化学反応モデルを設定し, 得られたモデルを用いて固体壁近傍の火炎の挙動を解析した. まず, 火炎内乱れの実験的評価については, He-Neレーザを光源とする多次元シュリーレン法を用いて火炎内の屈折率勾配の分布を透過光強度の変化に変え, それを空間的に微小な距離だけ隔てて置いた2個のフォトダイオードによって電気信号として取り出すという方法を採用した. 得られた火炎中の2点での透過光強度の時間的な変化の間の相互相関係数が最大となる時間遅れから, 火炎内乱れが火炎内の微小距離を通過するのに要する時間を求めて, 乱れの移動速度を算出した. この方法を用いて相互相関係数を求める時間間隔を変えることによって, 長い時間にわたる乱れの平均移動速度から, 比較的短い時間の移動速度までを得ることができ, また火炎内の2点間の距離を変えることによって, 乱れの規模を評価することができた. さらに異なる方向の2点間の透過光強度の変化を同時に測定することによって火炎内乱れの移動速度を多次元的に求められることが確かめられた. 層流火炎の計算機シミュレーションについては, 水素-空気予混合火炎を対象として, 9種類の化学種の間に生じる21組の素反応を考慮した軸対称火炎に対する化学反応モデルを設定し, そのモデルを用いて冷却固体壁に衝突する層流予混合火炎の挙動を解析した. その結果, 火炎の伝幡に必要な活性化学種は固体壁表面で消失するのではなく, 表面近傍の気相中で再結合反応によって安定化され, 消炎することが明らかになった. また, 壁近傍で温度が急激に低下する付近から軸方向の伝導によって熱エネルギーが固体壁表面へ移動してくることがわかった.
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