薄膜型高温固体電解質燃料電池に関する研究

1987 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 62603544
• 研究機関: 九州大学
• 研究代表者: 石原 達己 九州大学, 大学院総合理工学研究科, 助手 (80184555)
• 研究分担者: 荒井 弘通 九州大学, 大学院総合理工学研究科, 教授 (10011024)
• キーワード: 高温燃料電池 / 酸化セリウム固溶体 / 酸化物薄膜 / プラズマ溶射法 / 高出力化 / 耐還元性 / コーティング

研究概要

燃料電池は発電効率が高く次世代の発電システムとして期待されている。アルカリ土類金属酸化物(CaO、SrO)を添加した酸化セリウムは高いイオン輸率と導電率を示すことを見出した。本年度は高いイオン導電率を示す固体電解質の探索を行うとともに、燃料電池を構成し高出力化について詳細な検討を行った。希土類金属酸化物(Sm_2O_<3_<、Gd_<2>O_<3>、La_<2>O_<3>など)またはY_<2>O<3>を固溶させた酸化セリウムを調製し、濃淡電池法によりイオン輸率、直流四端子法により導電率を測定した。酸化セリウム固溶体では酸素イオン輸率はほぼ1であり、酸素イオン導電率も安定化ジルコニアよりはるかに高い値を示した。特に20at%・Sm_2>O_3<を添加した酸化セリウム固溶体は最も高い酸素イオン導電率を示すことを見出した。酸化セリウム固溶体を電解質とし、水素-酸素燃料電池を作製し、600-800°Cで発電実験を行った。酸化セリウム系固体電解質は導電率が高いので電池の内部抵抗は低く、安定化ジルコニアに比較してはるかに高い電流密度と出力が得られた。しかし、開回路電圧は安定化ジルコニアを用いた場合に比べて低下する。これは燃料極側で酸化セリウムが4価から3価に還元されることに起因すると考えられる。試料表面を還元に強い安定化ジルコニアで薄膜状にコ-ティングすると還元は抑制されるので電池の出力は増加した。また固体電解質の内部抵抗をさらに減少させ,高い出力を得る方法として、薄膜化が考えられる。酸化セリウム固溶体を用いてプラズマ溶射法により薄膜型燃料電池を作製した。ディスク状試料に比べ溶射膜では膜厚の低下に伴い内部抵抗が減少するので電流-電圧曲線の傾きは緩やかになり、電流密度、出力ともに増加した。以上のように酸化セリウム固溶体を燃料電池の電解質として応用すると高出力化が可能であり、さらに薄膜化は電池の出力向上に有効であることがわかった。

研究成果

• [文献書誌] Hiromichi Arai,Koichi Eguchi,Takanori Inoue: Transducers′87. 689-692 (1987)
• [文献書誌] Hiromichi Arai,Koichi Eguchi,Hidenori Yahiro,Yoshinobu Baba: Proceeding of 172nd Meeting of the Electrochemical Society. 263-264 (1987)
• [文献書誌] Hiromichi Arai,Koichi Eguchi,Takanori Inoue: Proceeding of the Symposium on Chemical Sensors. 121-131 (1987)
• [文献書誌] Hidenori Yahiro,Tatsuya Ohuchi,Koichi Eguchi,Hiromichi Arai: Journal of Science Materials.
• [文献書誌] Hidenori Yahiro,Yukari Eguchi,Koichi Eguchi,Hiromichi Arai: Journal of Applied Electrochemistry.