研究概要 |
ホットウォール法は真空蒸着法と気相反応法との長所を併せ持っているために化合物単結晶薄膜を得る方法として有用な方法である. 構成元素の蒸気圧が比較的高いCdTeの育成にはホットウォール法は適した方法である. この方法によるCdTe単結晶薄膜の育成条件は未だ完全に確立されてはいない. 本研究においては, BaF_2(111)へき開面およびPbTe/BaF_2(111)上にCdTe膜を育成してX線解析およびPLによって評価を行ないその結果を育成条件にフィードバックして適正条件を追求している. 同一の育成条件の下で育成した膜でも膜厚が約1桁異なる場合がある. これは, 厚いほうの膜は主にスパイラルモード, 薄いほうの膜は層成長モードによって成長が進むからであると考えられる. スパイラル成長モードは良質のCdTe膜を得るためには障害となるから, これを防ぐために基板表面の処理および基板表面における組成元素の過飽和度の制御を十分に行なわなければならない. 蒸発源温度と基板温度との差△T=T_<sd>-T_<sub>が約80°以上になるとほぼ完全にスパイラルモードとなり良質CdTe膜が得られない. なお, CdTeのみをとばすとTeリッチのCdTe膜となるのでCd蒸発源を設けてCd蒸気圧を調整する. この操作は得られた膜のPLにおける1.4eVの欠陥バンドの強弱と連動していることから欠陥がCd空孔であることを暗示している. X線回折の結果は, どちらの基板の場合にもBaF_2(111)単結晶基板の解析線と同程度にCuKa_<1.2>線を分離していくことから結晶性の良いCdTe膜になっていることを示している. 基板温度が480°Cの成長温度においては, CdTe膜の結晶性が著しく劣化することが分かった. 束縛励起子線は1.590eV近傍にピークを持ちCd蒸気圧によってピークの相対強度の変化ならびにシフトが観測される. これは, Cd空孔に関連したアクセプタの濃度にたいして相対的に変化していることを示している.
|