研究概要 |
本研究の目的は, Mn, Feの遷移金属イオンを含む半磁性半導体, Cd_<1-x>Mn_xTe, Cd_<1-x>Fe_xSe, Zn_<1-x>Mn_xTeなどを作製し, その光物性を調べ, これにもとづいてII-VI族半導体の新しい磁気光学的機能性を開発することにある. 今年度の研究実績としては 1.ブリッジマン法により種々の組成の各種単結晶を作製した. X線解析と成分分析により, 良好な単結晶性の確認と混晶組成の決定をした. 2.作製した単結晶試料のフォルトルミネッセンスを, 低温で測定した. Cd_<1-x>Mn_xTe, Cd_<1-x>Mn_xSe, Cd_<1-x>Fe_xSeの励起子発光スペクトルは, Mn, Feモル濃度の増加とともに, 高エネルギー側に推移し, バンドギャップ変化の磁性イオン依存性の定量的決定ができた. Mn高濃度域には2.0eV付近にMnのd電子による強い発光が現れた. これらの性質は, 発光材料, 光検知器材料としての応用に重要である. 3.強磁場下の励起子発光・反射スペクトルのゼーマン効果の測定より, 磁性イオンとの交換相互作用の大きさを決定した. またスピン反転ラマン散乱の研究をCd_<1-x>Mn_xSについて行った. その結果伝導電子とMnスピンの交換相互作用によって, 巨大スピン状態が実現しており, 通常の半導体の15-30倍も大きなゼーマン分裂が起きていることが分かった. この現象は磁場同調可能なラマンレーザーや光検知器としての応用が期待できる. 4.ピコ秒時計分解分光系を整備して, 光励起により生成された励起子の超高速緩和現象を測定した. その結果, 励起子発光の時間的推移から, 磁気的ポーラロン形成のためのMnスピンの整列過程, 混晶中の励起子緩和, スピングラスなどの問題を明らかにし, この物質に特有のスピン相関を持つ励起子の動的過程を解明した. 今後はこれらの知見を, 高速応答素子としての機能性開発に結びつける必要がある.
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