研究概要 |
本研究では表面と分子との特異な相互作用に焦点をあて, 金属や半導体の表面と分子との相互作用, その代表例である固体触媒作用などに, 理論的・分子工学的見地から光をあて, その電子過程の解明に基づいて, 表面と分子の相互作用が関連する材料設計に有用な知見を見出すことを目的としている. ここでは, このような観点で行った研究のうち, 次の2つの研究についてその概要を記す. 1.水素分子とプラチナ・クラスターの相互作用 プラチナ金属表面での水素分子の化学吸着のモデルとして, また小さな金属クラスターと水素分子の反応そのものに対する興味から, プラチナクラスターPtn(n=1, 2, 3)と水素分子の反応を理論的に研究した. その結果, Ptクラスターはn=1, 3のときH_2と反応し, H-H結合を解離するが, n=2のときはH_2との反応は起こらないことが示された. Pt原子では解離吸着に活性な状態は励起状態^1S(d^<10>)である. Pt_3に対する研究から, 解離吸着した水素は容易に表面を移行し, またその際, Pt-Pt結合も安定であることが示された. 吸着はPt_3のときでも, 本質的には一個のPtによって起る事も分った. 2.表面-分子相互作用素を扱うための新しい理論モデルーDipped Adcluster model 相互作用の局所性に基づくクラスターモデルは, クラスターの背後にある固体金属の影響を完全に無視しているため, 電荷移動やスピン移動の大きな表面反応過程の研究には不充分である. 表面-分子相互作用系をadcleusterと呼び, これが固体金属の電子浴に浸っていて自由に電子の交換を行っているモデルを提唱した. このモデルを用いて, パラゾウム表面における酸素分子の吸着過程を研究し, このモデルの有用性を確認した.
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