研究概要 |
1.複合触媒能を示す脱水素酵素の中でも応用酵素学的にも特に重要なロイシン脱水素酵素をとり挙げ, 各種好熱性細菌における本酵素の分布を検索し, 中等度好熱性細菌に属するBacillus stearothermophilusに高い活性が存在することを見出した. 本菌よりロイシン脱水素酵素を均一に精製し, その酵素化学的性質を検討した結果, 常温菌B Sphaericusの本酵素よりも耐熱性が20°C以上高く, 物理化学的に非常に安定であることが判明した. また, B steasothermaphiliesの本酵素遺伝子を大腸菌にクローン化し, クローン株内で大量に発現させることに成功すると共に, 耐熱性を利用する効率の良い酵素精製法を開発した. また, 本酵素遺伝子のDNA配列を解析し, 本酵素タンパク質の全一次配列を明らかにすると共に, 立体構造既知の他の脱水素酵素と比較することにより補酵素NADや基質の結合部位を推定した. 現在, タンパク質工学的手法を用いて本酵素の超耐熱化や複合機能化を試みつつある. 2.ピリドキサル酵素は一種類の補酵素の関与のもとにアミノ酸のラセミ化アミノ基転移, 脱炭酸など多くの反応を触媒する複合触媒性酵素である. 本研究は, ピリドキサル酵素の中でも最も根元的な反応を触媒するラセマーゼ特にアラニンラセマーゼを対象とした. 本酵素の好熱性細菌における存在を確認すると共に, 本酵素遺伝子のクローン化ならびに本耐熱性酵素の精製と酵素化学的性質の解明を行なった. さらに, 高発現株の作成とX線結晶解析を行ない, 本酵素のタンパク質構造に関する基礎的な知見を得た. 現在, 触媒機能に関与するアミノ酸残基の人工交換による複合触媒性の付与の可能性を検討中である.
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