研究概要 |
ZrF_4-BaF_2-MFn系ガラスのフッ化物イオン伝導メカニズムを(1)交流法電導度測定による電導度の組成依存性, (2)EXAFSによるZr-F結合距離の組成変化, (3)^<19>F-広幅NMRによるフッ化物イオンの運動挙動の温度依存性と組成依存性, 等を調べることにより, 原子レベルで検討した. その結果フッ化物イオン高電導度ガラスの化学組成設計に対する指針として, (1)ガラス構成カチオンの分極率を高める化学組成を選択すること, (2)Zr-F結合の結合強度を弱める化学組成を選択すること(帰納するとガラス網目形成カチオン, Mとフッ化物イオンとのM-F結合の強度が弱いガラス系を探索すればよいことを意味する. ), (3)二つのZrに結合したF(架橋Fと呼ばれる)を少なくすること(帰納するとガラス網目形成成分を減らすことが望ましいことを意味する. ), 等を得た. 以上の指針にもとづき, (1)弱いM-F結合強度をもつMFnをガラス網目形成成分とするガラス系, (2)高分極率をもつPbF_2成分を高含有するガラス系, (3)ガラス網目形成成分が少なくてもガラス化する系について電導度の検討を行った. その結果, PbF_2を含むInF_3系ガラスにおいて200°C近辺で約10^<-3>Scm^<-1>の電導度を示す超イオン伝導ガラスが得られること, そしてInF_3-SnF_2-PbF2系ガラスの電導度は超イオン伝導性結晶β-PbF_2のそれを陵駕することを見い出した. 本研究において現時点では最高のフッ化物イオン電導度を示すInF_3-SnF_2-PbF_2ガラスの開発に成功した. しかしながら, InF_3素ガラスは作製雰囲気中の水および酸素に極めて敏感でガラスの安定性に影響を与えるようであり, 今後, 作製プロセスを検討し, ガラスの安定性を増大させることが必要である. 一方, このガラスの構造のキャラクタリゼーションを行い, 更に電導度の高いガラスの開発を進めたい.
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