研究概要 |
酸化亜鉛系バリスターの電気的特性は半導体の酸化亜鉛粒子と絶縁性の粒界相の存在, さらに酸化亜鉛粒子とその表面における電価の分布などによって形成されるバリヤーの存在によって支配されることが分かっているが, それらの相互関係の詳細についてはまだ余り明らかにされていない. 本研究は焼成条件による, 非平衡状態にある焼結体の微構造とバリスター特性との相互関係を明らかにすることによって, 酸化亜鉛系バリスターの設計の基礎を確立することを目的として行なったものである. その第一段階として本年度はZrO-Nb2O5-MnO系に第4成分としてSiO_2を選んで配合した場合について実験を行なった. 配合組成は98.0ZnO-1.0Nb2O5-0.5SiO_2(mol%)で, 700°C, 1hで仮焼して作成した粉末を成形し, 1150°Cから1305°Cの温度範囲で, それぞれ1h保持後炉冷して試験体とした. 得られた焼成体試験片について焼成収縮率とかさ密度の測定から焼結の度合を, また粉末X線回折法及び走査型電子顕微鏡の観察から微構造を調べ, さらに厚さ1mmに研磨した試験片に, オーミック接融の得られる電極としてHg-Inアマルガムを塗布し, 電流=端子法で電圧-電流特性を測定した. さらにそれらの相互関係について検討を行なった. 実験の結果から焼成中に極めて少量の溶融物を生成したと思われる1250°C, 1h焼成の場合を除き, いずれの焼成体でも相当に顕著な非直線のV-I関係を示し, 1150°C〜1200°C, 1h焼成の, 焼成中に溶融物を生成しない場合にもバリスター特性が得られることがわかった. V-I関係がオーミックな領域では, その比抵抗値は, 焼結体のかさ密度が大きくなるほど小さくなった. 非直線指数の値は, 1.5〜3.0位の値であったが, 普通使用される1mA-10mAの範囲で7〜10位の大きな値を示すものも得られた. これらの結果と焼成体の結晶相の量比, ZnO粒子の大きさを関係付けた.
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