研究概要 |
本研究の目的は, 分子腺蒸着法(MBE法)を用いてどこまで薄くかつ均一な膜をつくることができるかを検討し, さらに蒸着時の分子線に光照射及び電場印加を行って膜の配向性を高めることができるかを調べることである. この線に沿っての62年度の研究経過は次の通りである. 1.TCNQ, TCNQ, TTF錯体の場合 TCNQあるいはTTF・TCNQ錯体を各種基板(シリコン, KCl, サファイヤ各単結晶, 石英)上に10nm以下の厚さで蒸着すると, いずれの場合も島状であり均一な薄膜は得られなかった. エピタキシー成長としては, 700°Cで前処理したシリコン単結晶上でTTF・TCNQが互いに垂直方向に成長した微単結晶となることが見出された. 2.アルミニウムーF-フタロシアニン(PcAl-)ポリマーの場合 上記物質はポリマーでありながら真空蒸着が可能で, かつTCNQなどに比べるとはるかに巨大な分子であるのでつぎにとりあげた. 蒸着膜のSEM像観察及びX線回折によれば, PcAlF-は数〓までの均一な薄膜を得る事が可能であることが判明した. シリコン単結晶(100)上では分子面が基板に対して直立した配向をしており, KCl単結晶(100)上では平行配向と直立配向がまざっているが, 平行配向部分がよく成長している. この傾向は, 蒸着時の基板温度が高くなるとより顕著となり, 比較的大きな(〜1000〓)単結晶の成長が認められた. 以上述べたように62年の研究では光や電場の影響を調べる以前の段階で終わってしまった. 今後は, 比較的扱いやすいことが判明したフタロシアニンを用いて, 多層膜系の開発, それらの物性研究, さらには光や電場の影響についても調べて行く予定である.
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