研究概要 |
通常の分光法ではスペクトルが複雑なため解析がほとんどなされていない, NO_2の可視部の吸収帯に関し, 光一光二重共鳴法を適用し, 回転構造の解析に成功した. この結果, 電子励起状態において, 初めて摂動準位と被摂動準位の回転状態を決定することができ, スピン軌道相互作用による摂動が働らいていることを明らかにした(小尾). チオフォルムアルデヒドのリドベルグ状態C^^〜^1B_2を経由する2+2光子イオン化スペクトルを測定し, その回転構造解析を行ない, Q枝とS枝の強度がシミュレーションにより計算値より弱いことを見い出したが, これはaligment等によるためと解釈される. また, 金属の多光子イオン化により電子や金属イオンを発生させ, ビームにおいてイオンー分子反応につき研究を進めた(佐藤). 多原子分子の高振動状態の準位構造を明らかにする目的で, もっとも単純な分子の一つであるSO_2の17000cm^<-1>付近の振動スペクトルをC状態を経由した誘導放出分光法によって高分解能で測定することに成功し, フェルミ結合やコリオリ相互作用による準位の結合を見い出した(土屋). 共鳴ラマン法によりフェムト秒時間領域の光励起状態の反応ダイナミックスの研究を進め, シスースチルベンおよび架橋シスースチルベンの光励起状態におけるねじれ振動解析から反応ポテンシャルにつき知見を得た. また, ピコ秒過渡分光法を用い, ベンゼンの各振電準位からの無放射過程の速度をはじめて直接測定し, 内部変換の機構を解析した(吉原). 四メチル鉛, 三メチルカリウムについて, しきい電子-イオン同時計測法を用い, 中心金属原子の(n-1)d内殻電子(nは価電子の主量子数)をイオン化したときの解離過程を調べた. これからの内殻電子が除去されると混成軌道に大きな変化が起り, それに伴う安定構造の変化で2つ以上のメチル基が協奏的に切れる過程が重要になることが明らかにされた(小谷野).
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