研究概要 |
イオンの気相溶媒和反応により生じるクラスターイオンの生成のダイナミックスおよびその物理化学的性質に関する研究は, 基礎および応用分野に重要な情報を提供する. この分野では比較的小さなクラスターイオンの研究に主力が注がれ, とくに小さなエネルギーから成る大きなクラスターイオンに関する研究は殆ど試みられていない. 本研究では, 極低温冷凍機を用いる測定法を開発し, 850〜25Kの広い温度領域において小さなサイズから大きなサイズに到るクラスターイオンの生成およびダイナミックスを研究し, 測定可能な低温極限のデータを集積することを目的とする. 極低温用小型冷凍機に純銅製のイオン源を取りつける. イオン源の温度はヒーターおよび温調機の使用により, ±0.1Kの精度で一定温度を設定できる. 25Kまで冷却可能である. イオン源を有するチャンバーをターボ分子ポンプで排気する. 平衡反応の平衡定数の温度依存性を測定することより、反応の熱力学的諸量を求めるこきができる。△G^0=-RTlnK=△H^0-+△S^0。H_3^+DのH_2分子による溶媒和測定において、クラスタ-イオンH_3^+D(H_2)_nのn=3、6、8でクラスタ-がshell構造を形成することが分かった。これより、H_3^+(H_2)_nの構造に関する知見を得た。N_2^+…N_2が共有性結合を有することを見出した。反応のエントロピ-変化が小さいので、N_4^+中のN_2分子が大きな運動の自由度を有することが分かった。N_4^+は、N_2分子によって静電的に溶媒和される。N_4^+(N_2)_nはn=1D1までとくに安定なshell構造をもたない。N_3^+(N_<2_)_<n>は、n=3でshell構造を形成する。O_<2>^+(N_<2>)_<n>では、n=4でshell構造を形成する。これは、O_<2>^+の4つのπ^+軌道のlobeににN_2>分子が配位するためである。正および負イオンともに、酸素分子より
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