研究概要 |
テトラキス(トリエチルホスフィン)ニッケル(0)触媒の存在下, エチニルペンタメチルジシランとジフェニルアセチレンとの1対1混合物を100°Cに加熱すると, (E, E)-1.3-ビス(ペンタメチルジシラニル)-5.6-(ジフェニル)ヘキサー3.5-ジエンー1-インが60%の収率で得られることを見いだした. この反応では, ほかの異性体はまったく生成しない. 同様に, 1-エチニルー1-(フェニル)テトラメチルジシランとジフェニルアセチレンとの反応も収率よくジエンインを与え, この反応も異性体の存在はスペクトル的にも, ガスクロマトグラフィによっても検出できない. またこの反応は, エチニルジシラン種特有の反応ではなく, エチニルモノシランにおいても起ることが明らかとなった. すなわち, ニッケル(0)錯体触媒存在下, t-ブチルエチニルジメチルシランをジフェニルアセチレンとともに100°Cに加熱すると, 唯一の生成物として, (E, E)-1.3-ビス(t-ブチルジメチルシリル)-5.6-(ジフェニル)ヘキサー3.5-ジエンー1-インを良好な収率で与えた. これらの生成物はエチニル基のSP炭素上の水素原子が, ニッケル触媒により活性化され, ついで2度の炭素-炭素結合の形成によって生成したものである. 一方, ケイ素原子上にエチニル基とフェニル基とを同時に有するモノシランおよびジシランは, テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)触媒によってエチニル炭素上の水素原子が活性化され, エンイン化合物を収率よく与えることを見いだした. この反応は, 興味深いことにもっぱら頭一頭結合により(E)-エンインを唯一の生成物として与える. 本年度以降は, 種々の遷移金属錯体を用いて有機ケイ素化合物のSP^2炭素上の水素原子およびSP^3炭素上の水素原子の活性化を行なうと同時に, 有機ケイ素化合物の機能材料への変換を試みる.
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