研究概要 |
本研究の目的は, 太陽系創成期に始原的物質がどのような火成作用によって, エコンドライトなどの分化した隕石を形成したかを明らかにすることである. そのために, 原始太陽系物質の相平衡実験を行い, その相関系の決定とエコンドライトへの分化過程の再現を試みた. 出発物質として, 太陽系元素存在度の物質を調製した. 加熱実験は常圧炉中で, 1070°C〜1600°Cの範囲で行った. 実験時間は, 平衡が十分達成されるように設定し, その後水で急冷した. 回収した試料は, 反射電子線像による観察およびEPMA分析を行った. その結果, 部分融解した液組成は, (1)どの温度でもユークライトやダイオジェナイト組成そのものにはならない. (2)液組成は, 1400°C付近でユークライト組成とダイオジェナイト組成を結ぶ線上にのる. また, この温度で液と共存する相はF_<o86>程度のオリビンのみであり, パラサイトに含まれるオリビンの平均組成と一致する. この実験での液組成は, ユークライトやダイオジェナイト組成にはならないが, それらの混合組成をもつ液が生成される. このため, 二番目の実験を, ダイオジェナイト55%とユークライト45%の混合組成をもつ出発物質で行った. その結果, (1)1180°Cで, F_<o68>のオリビンとEn70〜79Wo4の輝石が晶出する. このオリビン組成はダイオジェナイトのものと一致している. また, 輝石組成は, ほぼダイオジェナイトの輝石組成の範囲に含まれる. (2)液組成は, 普通ユークライトの組成範囲に入る. これらの実験結果から, 従来の全溶融説で考えられているような単一の分化過程ではなく, 第一段階目の分化によってコンドライト組成の出発物質から, ユークライトとダイオジェナイトの混合組成をもつ液が生成され, この液組成をもつ物質が第二段階目の分化をしてユークライトとダイオジェナイトができたと考えられる.
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