研究概要 |
本研究は, 太陽系の構成員の主要メンバーである巨大惑星の形成理論の構築を目的としている. 現在までの巨大惑星形成論は, 太陽系星雲の存在を無視して惑星を孤立系として扱った球対称近似の下での計算や, 巨大惑星と太陽系星雲との相互作用の線型理論解析が主であった. しかし, 原始太陽系星雲内での巨大惑星の形成過程は, 本来3次元非線型非定常な現象であるので, その本質を探るためには非線型で3次元の動的計算をする必要がある. そこで特に以下のテーマについて研究を遂行発表した. 1.巨大惑星(木星)の成長過程の数値シミュレーション 原始太陽系星雲中での, 木星のコアがまわりのガスを重力的に引き込み, 成長する過程を調べた. シミュレーションの結果, 木星の成長率及び, 木星の質量がいかに決定されたかを明らかにした. 2.差動回転するディスクの不安定性. 上で調べた太陽系星雲は, 最小質量モデルと呼ばれるモデルであるが, これは, 角速度が距離よって異なる回転(差動回転)をしている. 最近この様に差動回転する系において非軸対称の不安定が存在する事が報告されている. 従って, 元々の太陽系星雲のモデルの不安定性を調べ, 不安定な場合は, ディスクモデルを再構築する作業にとりかかった. まず簡単なモデル(非圧縮性流体で2次元モデル)において線型解析を実行した. その結果ケプラー回転に近い回転則の場合も不安定性が存在する事を解析的に示した. 次に, 不安定性は殆どの場合, 等エントロピーディスクに対して調べられているだけなので, その一般化の第一歩として, 密度勾配を有する非圧縮性流体の解析を行った. また不安定性の結果, 太陽系星雲がいかなる影響を受けるのかを調べるため, 非線型成長過程の研究も始めた. これを調べるための数値計算コードを現在開発中である.
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