研究概要 |
太陽系および太陽系惑星群の起源を研究する上で原始惑星大気と原始太陽風プラズマとの電磁相互作用を明らかにする事は相互間の運動量, 角運動量, エネルギー及び熱の遷移過程を考察する上で重要である. 太陽風は高温高速プラズマ流であったため, 惑星大気と電磁相互作用を行ない惑星の原始生成過程にも少なからず影響を与えたと考えられる. 本研究の目的は太陽系及び惑星の起源に関し, 計算機シミュレーションにより惑星大気と太陽風プラズマの相互作用を定量的に研究する事である. 計算機シミュレーションに当っては我国の「さきがけ」衛星によるハレー彗星, 米国の「ICE」衛星によるジャコビニ・ジナー彗星に関するデータを礎に彗星大気中の水系イオンが太陽風プラズマと太陽風磁場に拾われてゆくプロセスをモデル化し, 関与する電磁的並びに静電的不安定性の定量化を行なった. 特に水系重イオンの運動量が不安定性の非線形過程によって太陽風プラズマと波動の運動量に変換される事を計算機シミュレーションによって明らかにする事ができた. 得られた主な成果は次の通りである. 1.彗星から放出される水系重イオンは速度空間でビームを構成する. そこで電子, 陽子, ヘリウムイオン, 水イオンより成るプラズマ中のプラズマ不安定性を線形分散式を解き詳細に調べた. 水イオンビームによる縦波モード, ホイッスラーモード, アルフヴェンモード, 非共鳴モードが不安定になる事が示され, それらのパラメータ依存性が調べられた. 2.平行伝播性波動不安定性に関し, ハイブリッドコードによる計算機シミュレーションを行なった. これによって水系イオンの運動量, エネルギーが波動励起過程を介し, 太陽風プラズマと波動の運動量へと変換される過程が定量的に明らかにされた. 水系イオンが速度空間でシェル状分布を最終的に形成する事も示された.
|