研究概要 |
我々はプロテインキナーゼ型がん遺伝子の解析を進めているが, 本年度は新しいがん関連遺伝子の単離とる解析, 既知のがん遺伝子プローブをもちいた活性化がん遺伝子の検索, に重点を置いた. 1.新しい受容体型チロシンキナーゼ遺伝子の単離. v-rosDNAをプローブとし, ヒトの新しいチロシンキナーゼ遺伝子を単離した. 胎盤にmRNAの発現を認め, 7.7kbのCDNAを分子クローニングすることに成功し, 全塩基配列を決定した. その結果, fms関連遺伝子であることが明らかとなったため, flt(fms-like tyrosine kinase)と命名した. 現在, レトロウイルスベクターに組み込み, 潜在的発がん活性を検討中である. 2.酵母のcdc2/28に類似したヒトのキナーゼ遺伝子の単離. チロシンキナーゼドメインヒの弱い相同性により, ヒトゲノムDNAライブラリーから新しいセリン, スレオニン型キナーゼ遺伝子を単離した. CDNAを解析中であるが, 酵母の細胞周期に関与する遺伝子cdc2/28に部分的な類似性を示す興味深い構造をもつ可能性が高い. 3.プロトオンコジンc-rosの構造解析. これまでのところ, 欧米においても正常組織からのc-rosCDNAの単離には成功していない. 我々はその組織特異的発現を見出してCDNAを解析中である. 予備的結果では非常に長いリガンド結合ドメインをもつ受容体型構造をもつと推測される. 4.ヒト腫瘍における活性化プロトオンコジンの解析, ヒト慢性骨髄性白血病のbcr-abl再構成と欠失変異につき解析した. 脳腫瘍において遺伝子増幅したc-erbBの構造異常に関する分析をおこなった.
|