研究概要 |
1.c-yes関連遺伝子では, c-farの5末端側のCDNAクローニングに成功し, 全構造を明らかにした. c-yes fynについてはプロモーター領域の構造解析を行った. lynについては, 特異抗体を作用して, lyn蛋白質がチロシンキナーゼ活性を有していることを示し, 更にB-リンパ球で発現していることを見い出した. 抗yesモノクロナール抗体の作成にも成功し, 抗fyn, 抗fgr抗体の作成ももう一歩の所まできている. これら抗体を用いて, yes関連遺伝子物産の組織での発現検索が可能となってきた. 2.c-erbB2が分化度の高い胃癌(管状腺癌)や進行度の乳癌で偏って増幅していることを見い出した. 腺癌以外では脳腫瘍(星状細胞腫)で遺伝子増幅を見い出した. 特異抗体を用いた研究からc-erbB2蛋白質が胃癌細胞の微械毛に局在していることやEGFレセプターによって, そのチロシン残基がリン酸化されることを見い出した. 更にc-erbB2の転写プロモーター領域を解析した. 3.NIH13T3細胞への遺伝子導入実験から得られた新たなトランスフォーミング遺伝子が, c-rofに類似した遺伝子であることを見い出し, これをB-rafと命名した. C-raf同様, B-rofも5側での組み換えによって活性化されることを示唆する結果を得た. 更に, B-rafが種々のヒト癌細胞で発現していることから癌との係わりが示唆された. 4.erbAに関連する細胞遺伝子4種(ear-1, ear-2, ear-3, ear-7)を見い出しそのCDNAクローンの構造解析を完了した. ear-1とear-2が酷似した蛋白質をコードすこと又ear-1とear-7が染色体上極めて近い位置に存在し, 可成りの胃癌で増幅していることを見い出した. 5.癌遺伝子と癌原遺伝子の構造解析から, 特異抗体を用いた機能解析に重点が移ってきた. 更に転写支配因子や発現ベクタを用いた新種癌原遺伝子の腫瘍形成能の解析が可能となってきた.
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