研究概要 |
子宮頸癌やEV患者の皮膚癌とヒトパピローマウイルスとの関係を明らかにすべく, ヒトパピローマウイルスの遺伝子, 及び子宮頸癌中のHPVにつき検討を加え, 本年度は以下の結果を得ることができた. (1)宿主域の狭いHPVのbioossay系の開発を目指し, レトロウイルスベクター(pZipneoSV_x1)にHPVの遺伝子を挿入し, 効率よくHPVの遺伝子を発現できる系を作成した. 同系を用いてHPV16のtranstorming遺伝子に関する解析を行い, i)HPV16の初期遺伝子領域にコードされているE_6ORF(open reading frame)がヌードマウスでの造腫瘍性に関与していること, ii)E_6ORFは, fransforming phenotypeの発現を支配し, またラット初代培養細胞のimmortali zationに関与していること, iii)E5ORFは株細胞の造腫瘍性に関与している可能性が高いこと(E5ORFをΨ2細胞にtransfectすると同細胞はヌードマウスに対してnudule形成能を示した). iv)E_2ORFはtrans-acting機能を持つと同時にE6ORFによる造腫瘍性を抑制する働きがあること, をそれぞれ明らかにした. (2)子宮頸癌とHPVとの関係をより一層明確にすべく, 子宮頸癌組織中のHPVDNAの検索を行い, インドネシアの子宮頸癌患者の癌組織からHPVDNAを分離, 分子クローニングすることに成功し, 制限酵素地図や, hybridization試験の結果, 同HPVDNAがHPV6, 11, 16, 18, 31, 33及び38型と異なった. 新しいタイプのHPVであることを確認した. 現在, 子宮頸癌組織中のHPVDNAの検出率に地域差の存在が指摘されているが今後このような未知タイプHPVの分離は, 上記理由を解明していくうえで重要な知見を提供するであろう.
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