癌増殖局所における細胞性免疫の解析

1987 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 62614529
• 研究機関: 札幌医科大学
• 研究代表者: 菊地 浩吉 札幌医科大学, 医学部, 教授 (00045345)
• 研究分担者: 今 信一郎 札幌医科大学, 医学部, 助手 (10195886) ; 佐藤 昇志 札幌医科大学, 医学部, 講師 (50158937) ; 今村 正克 札幌医科大学, 医学部, 助教授 (30045398)
• キーワード: 癌特異的キラーT細胞クローン / 癌拒絶抗原 / 癌免疫療法

研究概要

癌増殖局所により分離したリンパ球を, rIL-2, MMc処理癌細胞でin vitro感作を続けることにより, 特異的なキラー活性をもつT細胞を選択し, 長期培養できることを確認した. しかも自家癌に特異的なキラーT細胞をクローン化することも可能であることが示された.
TcHMC-1はHMC-1に特異的に細胞障害活性を示し, K562等に対しては全くキラー活性を示さない. 一方HMC-1はヒト正常人のNK細胞に全く感受性を示さなかった. 更にOKT3, OKT8, classIなどモノクローナル抗体を用いた実験により, このペアはヒトにおける極めて秀れたCTLのモデルであることがわかった. このキラー活性をブロックするHMC-1に対するモノクローナル抗体3A2はこのペアの細胞障害機構に直接関係するHMC-1上の癌抗原であることが示唆された. HMC-1-8が由来した原発乳癌組織を3A2を用いて免疫組織化学的に検索したところ, 患者の乳癌細胞に強く抗原の局在を認め, 一部は腺管内腔にも陽性所見をみた. 一方, 同一患者の正常乳腺組織には全く3A2との反応を認めなかった. これはヒトにおける癌拒絶抗原の可能性を意味するものであり, 物質的な同定は現在進行中である. また癌抗原としての他に, 癌細胞破壊を誘導するのに必要なcell adhesion maleculeなどの可能性を完全には否定できず, この点についての検討を行っている. また既報のHMC-1よりのn-butanal extractの精製分子との異同も検討中である.
以上の成績は人癌における次のようなアプローチの足がかりとなるものである. (1)T細胞による自家癌細胞破壊機序の解析. (2)自家癌拒絶抗原を認識するT細胞受容体の解析. (3)自家癌の認識, 免疫成立における免疫調整リンフォカインの解析. (4)人癌の自己の癌細胞特異的キラーT細胞クローンの受身移入による癌免疫療法の追求.

研究成果

• [文献書誌] Sato,T.,Sato,N.,Takahshi,S.,Koshiba,H.and Kikuchi,K.,: Cancer Research. 46. 4384-4389 (1986)
• [文献書誌] Sato,N.,Sato,T.,Takahashi,S.,Okubo,M.,Yagihashi,A.,Koshiba,H.and Kikuchi,K.: J.Natl.Cancer Inst.78. 307-313 (1987)
• [文献書誌] Yagihashi,A.,Sato,N.,Torigoe,T.,Okubo,M.,Takahshi,S.,Takahshi,N.,Enomoto,K.,Yamashita,T.,Fujinaga,K.and Kikuchi,K.: Cancer Research. (1988)
• [文献書誌] Sato,N.,Yagihashi,A.,Okubo,M.,Torigoe,T.,Takahshi,S.,Sato,T.and Kikuhi,K.: Cancer Research. 47. 3147-3151 (1987)
• [文献書誌] Wada,T.,Uede,T.,Ishii,S.,Matsuyama,T.,Yamawaki,S.and Kikuchi,K.: Cancer Research.
• [文献書誌] Yamaki,T.,Uede,T.,Shijubo,N.and Kikuchi,K.: Journal of Immunology.
• [文献書誌] Sato,N. and Kikuchi,K.: "Fann Monograph" Japan Scientific Societies ( Tokyo ),
• [文献書誌] Uede,T.,Yamaki,T.,Ibayashi,Y.and Kikuchi,K.: "Gann Monograph" Japan Scientific Societies ( Tokyo ),