研究概要 |
1.cya遺伝子の発現調節と細胞分裂制御. cya遺伝子の発現制御を調べるため, cyaプロモーター領域とlacZをプラスミド上で融合させ, pCL1を作製した. pCL1をもつ大腸菌にcAMPを加え, 各濃度におけるβ-ガラクトシダーゼの活性を測定した. cAMP濃度が高くなるとβ-ガラクトシダーゼの活性が低下したことから, cyaの発現がcAMPによって抑制されることが明らかとなった. cyp株ではcya-lac融合遺伝子の発現はcAMPによって影響を受けなかった. 以上の結果はcAMP-CRP複合体がcya遺伝子の発現を負に制御していることが明らかとなった. 2.大腸菌の細胞周期とcya遺伝子の発現. cya-lacZ融合遺伝子を用い, 細胞の同調分裂時にcyaの発現がどのように変るかを調べた. 細胞の同調培養はdnaA(TS)菌を用い, 培養温度を42°Cから30°Cにシフトすることにより行なった. pCL1を含む大腸菌では, 同調培養開始後40-50分間はβ-ガラクトシダーゼの活性は増大し, この間細胞分裂は起らなかった. その後に細胞分裂が起こっている時にはβ-ガラクトシダーゼの活性の増大はみられなかった. 細胞分裂が終り, 細胞伸長が始まるとβ-ガラクトシダーゼの活性の増大が再び観察された. 以上の結果は, 細胞伸長時にはcyaの発現が促されており, 細胞分裂時には抑えられているということを示している. 3.cAMP要求株の単離. このように, 細胞分裂においてcAMPが重要な役割を果していることから, どのような遺伝子発現を調節しているかを知る手がかりとしてcAMP要求株の単離を試みた. cya株にTn10を用いて変異を与え, cAMP要求株を単離することに成功した. 4.考察と展望. fic変異株は高温で, cAMP存在下で細胞伸長を起すが, ficタンパク質がcAMPとどのような関連をもっているのかを解明する. fic遺伝子の構造を解明する.
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