研究概要 |
我々はBacillus licheniformie ATCC9945の株由来のpenP(ペニシリナーゼ構造遺伝子)とpenI(リプレッサー遺伝子)を含む低コピー数の組換えプラスミドpPTB60(Tc^r penP^+ penI^+)を突然変異処理し, 2種の温度感受性リプレッサー遺伝子penI(T)を取得した. これらの野生型および変異型リプレッサー遺伝子について塩基配列を決定した結果, リプレッサー蛋白(分子量14983)は128アミノ酸から成っていることおよび, 変異型リプレッサーはそれぞれ1アミノ酸置換が生じていることが判明した. また, プロモーターの下流には, 典型的なオペレーター配列が存在していた. 従来からの遺伝解析によりpenPとpenIは同一オペロンを形成している可能性が示唆されていたが, 塩基配列決定の結果, penPとpenIは逆向きの別オペロンを形成していることが明らかになった. 更に, penPプロモーターの内部と下流に連続したオペレーター配列が認められことから, リプレッサーによる厳密な形質発現の抑制が予想された. また, penI遺伝子のすぐ下流に大きなオープンリーディングフレーム(ORF)が認められたことから, このORFをpenJと名づけてそのクローニングを行った. その遺伝子について塩基配列を決定したところ分子量68,388の蛋白質(601アミノ酸から成る)がコードされているとこが示された. penIとpenJは同一オペロン上に存在しており, penP, penIおよびpenJ遺伝子を同時にB.subtilisに移入した時にのみ, セファロスポリンC(5μg/ml)によるペニシリナーゼの誘導が観察された. また, penJにフレームシフト変異を与えた後, この断片をB.licheniformisに再移入して, 染色体との交換を行った結果, 本来有していた誘導能が失われていた. これらの結果から, penJはアンチリプレッサー様の正の制御因子をコードしていることが明らかとなった.
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