研究概要 |
3種類のNa, K-ATPaseアイソザイムのα鎖(αI鎖(旧α鎖), αII鎖(旧α(+)鎖)およびαIII鎖)のcDNAをプローブとして, ラットの種々の組織, 細胞に存在するNa, K-ATPaseα鎖のmRNAの種類をハイブリット形成によって解析した. ノーザンブロット法, ドットブロット法により, 成熟ラットの大脳にはαI鎖, αII鎖およびαIII鎖のmRNAがすべて存在することがわかった. 大脳のαI鎖のmRNAはαIII鎖のmRNAよりやや大きく, 両者とも28Sよりやや小さく, それぞれ単一であった. αII鎖のmRNAは28Sより大きく単一ではなかった. これに対し, 成熟ラットの腎臓にはαI鎖のmRNAのみ存在し, 心臓にはαI鎖とαII鎖のmRNAが存在した. 一方, 16日胚, 5日齢のラット大脳にも3種類のα鎖のmRNAが存在した. これは, 16日胚の大脳にはジギタリス高感受性のαII型酵素活性がほとんど存在しないのに, αII鎖のmRNAは既に存在することを示す. 16日胚から得て11日間初代培養したニューロンにはジギタリス低感受性, 高感受性(αI型, αII型)の両酵素活性が存在するが, αI鎖とαII鎖のmRNAに加えαIII鎖のmRNAも存在することが明らかとなった. 他方, ジギタリス低感受性(αI型)酵素活性のみを持つPC12h細胞にはαI鎖のmRNAしか存在しなかった.
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