研究概要 |
ミトコンドリア酵素異常による疾患(ミトコンドリアミオパチー)では症状の多様性, また生化学的所見の多様性が強いことが知られている. このような多様性は酵素活性値の組織特異性による点が大きいと考えられる. 生検材料の組織特異性と臨床症状, 生化学的所見の対比を試みることを主目的として以下の研究を行なった. (対象・方法)ミトコンドリア電子伝達系酵素の一つでしる複合対IV(cytochrome c oxidase)欠損患者16例の生検筋に組織化学的染色, 電顕組織化学染色を行なった. 筋線維, 血管, 筋紡錘, 線維芽細胞, 血球の酵素活性について主として電顕組織化学的に検討した. 生検筋, 皮膚線維芽細胞の培養も行ない, 培養系で酵素欠損が再現されうるかどうかも検討した. (結果)(1)乳児致死型では骨格筋線維には酵素活性は完全に欠如していたが, 筋紡錘内錘線維, 血管壁には活性があった, 培養系では骨格筋線維由来の筋管細胞には活性がなかったが, 線維芽細胞には活性があり, 培養系でも組織特異性は再現された. (2)脳筋型12例中3例は筋線維, 血管壁, 線維芽細胞脱全てに活性はなかった. これらの症例は乳児期早期に発症し, 急速に増悪したのいで, 一時的に急性型として細分類した. 他の9例は骨格筋内の筋線維でも活性のあるのと低下したのがモザイクをなすことが多く, 血管壁には活性がみられた. 培養系でも骨格筋由来の筋管細胞の活性値は一定しなかった. 線維芽細胞には活性がみられた. この9例は慢性型とした. (考察)複合対IVの組織化学的, 生化学的検索から, 本症では組織特異性が極めて強いことが明らかにされた. 組織特異性の有無を知ることは, 本症の発生機序を知る上で重要であり, DNA分析の結果との対比が必要であると考えられた.
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