研究概要 |
我々の研究からWHHLウサギはLDL受容体が欠損していることが判明し, 家族性高コレステロール血症(FH)のモデル動物となりうることがわかった. 近年冠状動脈硬化性疾患の発生頻度が上昇しており, その発症機構の解明およびその治療方法の確立は急務である. ところがWHHLウサギはFHと異なり, 冠状動脈硬化病変の発生頻度が低率であった. 最近WHHLウサギの中に冠状動脈硬化病変を若令より起こす系統があることが明らかになり, 従来のWHHLウサギとの性質を比較していたところ, 硬化病変を起こす系統の血清リポ蛋白のうち超低比重リポ蛋白(VLDL)が粥状動脈硬化病変の中心をなす泡沫細胞の起源であるマクロファージ(Mφ)を泡沫化することを発見した. そこで我々はWHHLウサギの血液を採取し, VLDL分画を分離し, Mφへ取り込みを〔^<14>C〕oleateを用いてコレステロールの再アシル化反応を利用して検討し, その取り込み機構も合わせ検討した. 〈結果〉WHHLウサギVLDLを分離した後, Mφへの〔^<14>C〕oleateの取り込みを調べると, 最高25〜26n mol/mg proteinのcholesteryl〔^<14>C〕oleateの産生をみた. ところがWHHLウサギの群のVLDLの中に〔^<14>C〕oleateの再アシル化がほとんど起こらない群があることが判明した. 取り込みの認められない群の冠状動脈硬化病変は軽微であることが判明した. 動脈硬化好発群のVLDLのMφへの取り込み機構の詳細を検討したところ, 次のような結果が得られた. VLDLのMφへの取り込みは受容体を介して行なわれているが, その取り込みを種々のリポ蛋白を同時に与えることにより競合すると, III型高脂血症の時に血中に増加するβ-VLDLによりVLDLの取り込みが抑制されたことからMφのβ-VLDLの受容体を介することが明らかになり, さらにその取り込みの際にVLDL中のアポ蛋白Eが受容体に認識されることが必須であることがわかった. この方法で冠状動脈硬化発症WHHLウサギを選抜中である.
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