研究概要 |
神経細胞のシナプス形成は, 神経系の形態形成及び機能発現に重要な関わりを持つ. 代表者は, 現在, シナプス形成に関連する遺伝子のクローニングおよびその発現制御を調べることによって,その制御機構の解析を行おうとしている. 特に, 細胞内情報伝達系との関連で, 転写制御レベルに焦点を当てて解析を進めている. 1.プロテインキナーゼ阻害剤による突起伸長促進反応;細胞内情報伝達系に影響を与える薬剤をマウスニューロブラストーマN18TG2に加えた所, 一連のプロテインキナーゼ阻害剤が著しく突起伸長を誘起することを見い出した. 特に, H-7は細胞毒性も少なく, ジブチリンcAMPと同様に有効な刺激剤として使用可能である. 2.突起伸長時における核内転写制御活性レベルの変化;突起伸長状態にある神経細胞内の転写制御活性変化を探るために, トランスフェクション実験を行った. 各種エンハンサーノプロモーターにタロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)遺伝子を結合したものを, 細胞に導入発現させた. その結果, AV40のエンハンサー活性がH-7投与によって大きく影響を受けることがわかった. モロニー白血病ウイルスやポリオーマウイルスのエンハンサーについては全く影響が見られなかった. また, 同様の結果は, 神経細胞としての性質を持つ融合細胞のNG108-15でも認められた. しかし, マウスNIH3T3, ラットC6グリオーマ細胞では認められなかった. 以上の結果は, 突起伸長細胞においてもトランスフェクション実験が可能なことを示しており, 今後, 種々の関連遺伝子の転写制御機構の解析が可能になるものと思われる.
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