研究概要 |
先天性銅代謝異常症であるウィルソン病において, 中枢神経障害の評価, 中枢神経に対する治療効果判定に髄液銅定量が有用であることを明らかにした. またもう一つの銅代謝異常症であるメンケス病に関して, モデル動物であるマクラ・マウスの各組織の銅含有量, チトクロームCオキシダーゼ(CCO)活性を検討した. 結果(1)マクラ・マウス中枢神経系において, 銅含有量とCCO活性は, 大脳, 小脳, 脊髄のいずれでもほぼ同じ傾向を示した. すなわち日令7のマクラ・マウスでは対照に比べ銅含有量は低下し, CCO活性は明らかな低下を示した. 日令14では銅含有量, CCO活性とも著明に低下していた. (2)マクラ・マウス肝での銅含有量は対照より明らかな低値であったがCCO活性の低下は軽度であった. (3)マクラ・マウスでの腎の銅含有量は, 日令7, 14とも対照より著明な高値を示したが, CCO活性は日令14ではむしろ低下した. (4)マクラ・マウス中枢神経系のCCO染色において, 染色性が対照より明らかに低下する細胞と, 対照に同程度に保たれる細胞が区別された. 以上よりマクラ・マウスには, 銅含有量の増加する組織と低下する組織があるが, CCO活性は両者とも低下する傾向を示し, 銅分布異常とともに, 銅利用障害の存在が疑われた. またマクラ・マウス中枢神経系のCCO染色性では, 細胞の種類により銅分布, あるいは, 銅利用の差があることが推定された.
|