研究概要 |
心筋の虚血によるエネルギー代謝関連物質の変動を^<31>P-NMRより, また心筋細胞内Na, K含量の変化を^<23>Na-, ^<39>K-NMRにより測定し, エネルギー代謝とイオン流との情報によって心機能の障害過程の解析を試みた. 心筋細胞内ATPの分布は均一ではないことが示唆されて来た. 高分解能^<31>P-NMRの測定では, 運動性の低いタンパクに結合しているATPやミトコンドリア内ATP等では観測できない. したがって^<31>P-NMR法と化学的測定法を対比させて, 心筋細胞内ATP分画の存在を明らかにした. ラット心Langendorff標本の^<31>P-NMRを繰り返し時間6秒, 256回の積算を行って, スペクトルの測定をした. ^<31>P-NMR測定直後, 液体窒素により反応を停止させて, 燐化合物の化学的測定を行った. 正常潅流時における化学的測定値はATPとCr-Pは夫々22.4と22.9μmol/g.dry wt.であった. ^<31>-NMRより求めたATPとCr-Pは夫々13.7と22.8μmol/g.dry wt.であった. 阻血開始後, ^<31>のATPのシグナル次第に減少し, 16分にて完全に消失した. この時点における化学的測定では5.7μmol/g.dry wt.のATPが測定された. このように, 心筋内ATPにはNMRにて観測し得る分画(約60%)と観測されない分画(約40%)の二種類が存在することが明らかなてった. 高分解能NMRの特性から, 前者のATPは遊離型きして存在し, 後者はミトコンドリア内に, あるいはタンパク結合型として存在しているものと推察される. また阻血時において細胞質の遊離型ATPがより早く枯渇したことより, 阻血時におけるATPの減少は心筋細胞内において均一ではない事も明らかとなった. この様な結果を利用して, 心筋内エネルギー代謝のキネティックな動態を検討した. 現在^<23>Na-, ^<39>K-NMRによる実験を鋭意行っている.
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