本研究で当初試作を目的としたトリアーク炉は、たやZr等の不純物ガスゲッターをアーク加熱溶解し、炉内に残留する酸素等の不純物ガスを吸収しながら、出力を独立に制御した3つのアークトーチを用い、回転している水冷ハース上で母結晶を均一に溶解し、主に単結晶を引き上げるように新しく開発した電気炉である。これは昭和62年度末までに試作を完了し、当初要求した性能を充分に発揮した。このトリアーク炉を用い、高濃度近藤状態にあって、極低温ではヘビーフェルミオンとなるCe化合物やウラン化合物の純良単結晶の育成方法を開発することも目的とした。従来のトリアーク炉は水冷ハースが回転できず、従って融触中の母結晶の温度分布が不均一であり、特に低融点の試料の単結晶を引き上げることが不可能であった。昭和63年度では、本試作炉の特徴である水冷ハースの回転により、1000℃以下の融点をもつ化合物の育成条件を研究し、その最適条件を探求し、Ceの3元合金での研究成果が発表できる段階にまで進展した。更に10月以降の後期には、アーク電流の出力が微調整できる電源の開発や、炉内を明視可能で、且つ清浄化も簡単にできる炉チャンバーをガラス製に改良し、更に多目的で付加価値の高い小型実験炉への改良を探索し、拡充設計試作を試みた。その結果は、昭和63年度発足の室点鉋式研究「アクチナイド化合物の物性で用いるウラン化合物の物質採索用小型実験炉として開発するまでに至っている。 Ce化合物の純度単結晶の育成法に関しては、既存の結晶育成装置を駆使して育成した結晶を用いた物性研究の結果と比較検討し、現状では、超高品位の単結晶育成法として可能な限り高純度の原料素材を使用して結晶を育成し、超高真空中で熱処理する方法が最善であるとの結論に到達している。
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