大気中の二酸化炭素濃度をC、風速の鉛直成分をWとすると、濁相関法により、二酸化炭素の輸送量は<WC>^^^ー=<W′C′>^^^ー+W^^ーC^^ーで与えられる。ここで、ダッシュは平均値からの変動量を示し、横棒は測定時間についての平均値を表わす。生育の盛んな作物群落上では、光合成によって、作物群落に吸収される<W′C′>^^^ーの値が大きく、W^^ーC^^ーは<W′C′>^^^ーの5%程度である。海洋上での<W′C′>^^^ーとW^^ーC^^ーの大きさを知るために、新潟県中頸城郡大潟町にある京都大学防災研究所附属大潟波浪観測所の観測用桟橋を利用して、日本海海面上での二酸化炭素の輸送量の輸送量の観測を行った。得られた知見のうち主なものを以下に示す。 1. 二酸化炭素濃度は空気塊が鉛直上方に輸送される場合に2ppm程度急激に低下し、空気塊が鉛直下方に輸送される場合には高濃度のあるレベルに限界があるように変化する。このような二酸化炭素濃度の変化は気温や水蒸気の変化とは位相が180度異なっている。 2. 二酸化炭素濃度、水蒸気、気温のパワースペクトルはお互いによく似た周波数構造を有している。パワースペクトルは高周波数領域で周波数の-5/3乗に比例して減少する、いわゆる慣性小領域が存在することを示した。 3. WCコスペクトルは全周波数領域で負の値を示した。これは二酸化炭素が乱渦によって鉛直下方に輸送されていることを意味している。また、二酸化炭素の乱流輸送<W′C′>^^^ーに最も大きく寄与しているのは0.01〜0.1Hzの周波数領域であることが判った。 4. W^^ーC^^ーの符号は顕熱と潜熱の輸送方向に依っているが、夏季と秋季の日本海上では正であった。また、その大きさは<W′C′>^^^ーの約2倍であった。この結果、二酸化炭素の輸送量<WC>^^^ーは常に正となり、二酸化炭素が海洋から大気中に放出されていることを示した。
|