新型高性能遠心顕微鏡の試作とその生物科学の応用

1989 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 62840021
• 研究機関: 一橋大学
• 研究代表者: 上坪 英治 一橋大学, 商学部, 教授 (60111697)
• 研究分担者: 菊山 宗弘 放送大学, 助教授 (90131010) ; 吉本 康明 関西医科大学, 教養部, 教授 (30124225) ; 平本 幸男 放送大学, 教授 (50011440)
• キーワード: ストロギ型遠心顕微鏡 / フラスモ節間細胞 / 原形質流動 / ウニ卵細胞質 / 皮層下アクチン繊維束 / 遠心加速度

研究概要

世界初のストロボスコ-プ方式高性能遠心顕微鏡の試作に成功した。試作機(CMSーII)を用い、次の研究がおこなわれた。
(1)フラスモ節間細胞の原形質流動は電気刺激によって瞬間的に停止し数秒〜10数秒後除々に再開する。数100〜1400xgの遠心加速度場においても同じ現象がおこる。流動停止の時点で細胞皮層下アクチン繊維束と細胞質内質との間に一過性の架橋構造が形成されるらしい。部分的に皮層下繊維を除去した細胞を用い、遠心加速度下に電気刺激をおこなってこれを実証した(上坪・菊山)。
(2)フラスモ節間細胞の原形質流動速度におよぼす遠心加速度の影響を調べた。皮層下繊維近傍の細胞質の流速は、50〜1500xgの範囲でほとんど一定で対照と等しく、求心方向の減速・遠心方向の加速のいずれも観測されなかった(上坪・菊山)。
(3)タコノマクラ、イトマキヒトデなどの卵を用い、卵細胞質の力学的性質を調べた。CMSーIIと金粒子法を併用し、卵細胞質の不均一性・発生にともなう見かけの粘度の経時変化が観測された。また、分裂装置の位置と分裂溝形成におよぼす遠心力の影響をみた(平本)。
(4)プロカイン付活したウニ卵は、付活後急速に堅くなり、20分・70分・120分に堅さのピ-クが観測された。20分後のピ-クはCMSーIIによってはじめて見出された。コルセミど・サイトカラシンBなどの効果も調べた(吉本)。
以上のごとく、新型高性能遠心顕微鏡は動・植物生理学、細胞生理学などの諸分野において極めて有効な研究手段であることが実証された。
CMSーIIはほとんど完成したと考えて良いが、電子回転計の表示に最大2秒の遅れがある。現在その改良を行いつつある。

研究成果

• [文献書誌] Kamitsubo,E.,M.Kikuyama&I.Kaneda: "Apparent viscosity of endoplasm of characean internodal cell measured by centrifuge method" Protoplasma. Suppl 1. 10-14 (1988)
• [文献書誌] Kamitsubo,E.: "Plasmodial cvtoplasmic streaming under centrifugal acceleration observed with a new centrifuge microscope" J.Muscle Res Cell Motility. 10. 269 (1989)
• [文献書誌] 菊山宗弘,上坪英治: "原形質流動の研究における遠心処理の適用" 生体の科学. 39. 500-501 (1988)
• [文献書誌] Takagi,S.,E.Kamitsubo&R.Nagai: "Light action on chloroplast behavior under centrifugal acceleration" Plant water relations and growth under stress.Proceedings of the Yamada Conference XXII(Osaka). 455-457 (1989)
• [文献書誌] Kamitsubo,E.,Y.Ohashi&M.Kikuyama: "Cytoplasmic streeaming in internodal cells of Nitella under centrifugal acceleration:a study done with a newly constructed centrifuge microscope" Protoplasma. 152. 148-155 (1989)
• [文献書誌] Kaneda,I.,E.Kamitsubo&Y.Hiramoto: "The mechanical structure of the cytoplasm of the echinoderm egg determined by“Gold particle method"using a centrifuge microscope" Develop.Growth&Differ.32. 15-22 (1990)
• [文献書誌] Hiramoto,Y.: "Mechanics of dividing cells.In“Progress and new directions of biomechanics(Eds.Y.C.Fung et al)" Mita Press,Tokyo, 444 (1989)