昭和62年度の研究において横方向成長を用いたSOI構造の形成に関する基本的な事項を明らかにすることができた。昭和63年度の研究においては特性の優れたSOI構造を作成するため、横方向成長のメカニズムを明らかにした。その結果膜厚に対する横方向成長量の比である縦横比が30以上に改善された。これらの結果を利用して平成元年度においては定まった厚さのSOI層を得るためリッジシ-ドによる横方向成長を試みた。また混入する錫の影響を調べるためp-n接合を形成し、特性評価を行った。 LPE法では従来膜厚を制御することは難しかった。昭和63年度にてステップ源を解明しステップのないファセット面を利用すると膜厚方向には成長せず、横方向だけに成長することが分かった。このことを利用すると、上面に完全なファセットを持つリッジから横方向成長を行うとリッジ高さと同じ膜厚の成長層が得られることが期待される。実際にリッジ高さを変えてリッジシ-ドから成長を行ったところ、成長層膜厚がリッジ高さと同じとなり、膜厚が制御できるようになったことがわかった。この方法にて薄膜の成長を試みたところ、膜厚0.23μm、片側の横方向成長量18.8μm、縦横比83を得た。この結果からリッジシ-ドを用いることで100nmオ-ダ-の膜厚が制御できることと、本成長法を用いることで縦横比が80以上に改善されることが分かった。 n形成長層にイオン注入法を用いてp-n接合を形成し、電流電圧特性を測定したところ、逆方向電流は非常に少なくn値は1.74となりバルク上に作成したp-n接合と同程度の値となった。この結果から本成長に用いた溶媒の錫は10^<19>cm^<-3>程度取り込まれているが、電気的特性には影響はないことが分かった。
|