物質の弾性的な性質を反映した超音波顕微鏡像を、同一部分の光学顕微鏡像と対比しながら同時に観察することができれば非常に便利であり、このような要求に応えうる、光学像と音響像の同時観察が可能な新しい映像システムの実現が望まれている。近年、本研究担当者らが開発したフレネルゾーン型の平面構造超音波顕微鏡レンズは、従来の凹面音響レンズに比肩する性能を示すうえに、球面を用いていないため、レンズ内に光の導波路を設けるのにも大変都合が良い。 本研究は、上述の超音波顕微鏡用平面音響レンズの材質として、光工学の分野で注目されている屈折率分布型のセルフォック・ロッドレンズを用いることにより、平面構造を特徴とする光・音響共軸共焦点レンズを設計・製作し、光学像と音響像の同時観察が可能な新しい顕微鏡システムを構築することを目的としたもので、次のような成果を得た。 1.フレネルゾーン型音源の放射音場を理論計算により求め、これが凹面振動子とほぼ同じ集束能力をもつことなどを明らかにした。 2.セルフォックレンズを用いた光・音響共軸共焦点レンズの構成法を示し、焦点距離を与えた場合にレンズ長を求める設計式を導出した。 3.反応性イオンエッチングによりレンズの製作を行い、製作のプロセスを確立した。 4.製作したレンズの集束性能について、光と音響の両面から検討し、いずれも良好な集束能力を示すことを確かめた。 5.機械走査型の超音波顕微鏡装置を基礎として、光・音響共軸顕微鏡システムを完成させた。 6.被検体試料の光学像と音響像の同時観察を行い、新しい顕微鏡システムの有用性を実証した。
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