本年度は、昨年度に得られた知見をもとに、申請書に従って連続ダイノード形の放射形2次電子増倍管を試作し、実験を行なった。その結果を以下に記す。 1.空間電荷効果は前年度の分割ダイノード形と同様に軽減されて、2MAでも全く飽和しないことが確認された。 2.増倍率に関しても、印加電圧1.4KVで、10^4倍程度あり、前年度のタイプにくらべても、飛躍的に上がった。これは、一般の市販品と比べても、同電圧の領域では決っしてひけをとるものではない。これ以上の増倍率は、測定装置の問題から測定できなかっただけであり、十分高い利得が実現されていると思われる。 申請書においては雑音特性、周波数特性等をとる予定であったが、磁場特性に関して新たな知見が得られ、実用上、こちらの方が重要であると考え実験を行なった。 本方式によれば、増倍管に軸方向に磁場がかかった場合、二枚の平行なダイノード面に対して横方向にローレンツ力がかかるので、増倍された電子は、ダイノード面にもどされることなく運動をつづける。この際うず巻状の電子運動となるので、走行距離が長くなり、衝突回数が増え利得がかえって増加するのではないかと考えられる。実験はこれを示しており、200ガウスで、利得は2倍ほど増加した。 今後は、より高い増倍率の測定、磁場特性を測定する予定である。
|