海洋構造物は波浪荷重による不規則な変動荷重をたえず受けている。不規則変動荷重下の疲労強度は、その寿命分布特性が完全には明らかにされていない。そこでまず、寿命分布を従来提案されている方法に比べてはるかに容易に推定できる新しい疲労試験法を提案した。それは一本の試験片に統計的に同一な多数の切欠きを設けた多数切欠き付試験片を用いる実験方法である。繰返し荷重を負荷する間、繰返し数を変えて数度試験機を停止して、その都度疲労き裂の発生した切欠きとその個数を測定する。これらのデータは新しく提案した尤度関数に組込み、ベイズの定理で寿命分布を推定する。この方法を用いると2〜3本の実験で疲労寿命分布を推定でき、従来の単一切欠き付試験片を用いた場合に比べて、試験時間を1/10以下に短縮できる。 次に本研究では疲労損傷の可能性のある構造部材の信頼性の計算法について検討を行った。構造部材に疲労損傷が発生すると、断面積が減少し、剛性が低下し部材破壊に至る可能性がある。このようなプロセスを計算する方法として、(1)Yangの提案した方法を発展させた信頼性解析法を提案し、(2)また汎用性の高い方法として、マイコフ連鎖モデルを応用した方法を考えた。(1)については完成し、その成果は造船学会論文集に報告した。(2)については未だ完成には至っていないが、プログラムを作成して数例の計算結果を得ている。この方法は(1)の方法に比べて、多くの確率変数を同時に組込みことができ、今後の発展が期待される解析法と考えている。なお研究成果報告書にその解析法と計算結果をまとめている。
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