海洋構造物は波浪荷重による不規則な変動荷重をたえず受けている。不規則変動荷重下の疲労強度は、その寿命分布特性が明らかにされていない。そこで本研究では、まずその寿命分布を従来提案されている方法に比べてはるかに容易に推定できる新しい疲労試験法を提案した。実験には一本の試験片に統計的に同一な多数(本研究では60箇所)の切欠を設けた多数切欠き付試験片を用いた。繰返し荷重を負荷する間、繰返し数を変えて数度試験機を停止して、その度に疲労き裂の発生した切欠きとその個数を測定する。これらのデータは新しく提案した尤度関数に組込み、ベイズの定理で寿命分布を推定する。この方法を用いると2〜3本程度の実験で疲労寿命分布を推定でき、従来の単一切欠き付試験片を用いた場合に比べて、試験時間を1/10以下に短縮できる。 次に本研究では疲労損傷の可能性のある構造部材の疲労信頼性の計算法について検討を行った。構造部材に疲労損傷が発生すると、断面積が減少し、剛性が低下しまた、き裂伝播によって部材破断に至る可能性がある。このようなプロセスを計算する方法として本研究では(1)Yangの方法を発展させた信頼性解析法を提案し、(2)また汎用性の高い方法として、マルコフ連鎖モデルを応用した方法を考えた。(1)については完成し、すでに海洋構造物パイプ継手の疲労信頼度計算を行っている。そして疲労き裂発生寿命、伝播寿命のばらつきが部材の信頼性に及ぼす影響を定量的に明らかにした。(2)については未だ不備な点があるが、数列の計算結果を得ている。(2)の方法はマルコフマトリクスと呼ばれる推移確立行列を決定してやるだけで、複雑なき裂発生、伝播、破壊事象を確率的に表示する必要がない。今後の発展が期待される信頼性解析法と考えている。
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