研究課題
試験研究
本研究は欠陥を内在する鋼構造溶接接合部の全断面降伏状態に達するような高歪領域での破断延性を破壊力学を適用して定量的に評価することを目的とする。研究はまず溶接施工グレード別に欠陥の出現率の評価と欠陥形態を抽出する。それらの結果にもとづいて種々の寸法、材料特性値を有する切欠付平板の引張実験を行ない、COD(亀裂開口変位)と部材の巨視的変形を表わすOverall Strain(全体歪)の関係について考慮した。切欠付平板COD-ε∞関係を、切欠長さa、鋼材の降伏歪εyを用いて無次元化したCOD/2πaεy-ε∞/εy曲線は、遷移領域が存在する場合ほぼ一本の曲線で表わされ、平面応力状態に近づくほど勾配は大きくなる。また片側欠陥の場合はこの傾向は強くなりほぼ50%減の破断延性と考えられる。これらの結果はδcと平面応力状態に対応するCOD/ε∞関係で破断延性評価が可能なことを示している。次に新たに開発した亀裂進展可能な有限要素法を用いて正確に把握し、同時にCOD、J積分の破壊基準としての相関関係についも数値解析的に検討を加えた。積分とCODの関係は、切欠長にほとんど影響されない線形関係で、その勾配は小規模降伏の範囲では部材の降伏応力度δy、塑性化が進み遷移領域に達すると、ほぼ引張強さのδuに等しくなる。これらの曲線を切欠長2a、降伏応力度δy、降伏歪εyを用いて無次元化すると、部材の材料特性値に依存しない一本の曲線として表わすことができ、このCOD/2πaεy-J/εyδya曲線を用いることでCOD-J関係の画一的な評価が可能となった。また、欠陥を有する柱-梁接合部の極低サイクル繰返し曲げ実験を行ない、変形性能限界点と、それに対応する繰返し数の検討も行った。以上の結果は欠陥を有する溶接接合部の破断延性評価に対して、一方向を与える もので貴重な成果と思われる。
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