研究概要 |
炭化物形成元素、たとえばTi,V,W,Mo等を含有する鋼を浸炭すると、MC型やM_6C型の硬質炭化物がマルテンサント中に微細かつ多量に分散した組織が得られる。この様な炭化物分散を伴う浸炭(CD浸炭法)を行って、優れた機械的性質を有する組成の基礎実験及びその特性について調査した。その結果、耐摩耗性及び靱性の極めて優れたV系高速度鋼の開発に成功した。さらにこのCD材の適用として、本法の特徴も生かせる細径あるいは薄板形状の実用用途への適用も進展しつつある。そしてまた積層バルク材の適用の検討も行っている。以下研究開発経緯の概要を示す。 1.CD材における各種元素の影響 CD材に適した合金元素及びそれらの相互の影響についての基礎調査を行った。合金元素としてはVが最も適しており、5〜10%V鋼を基本系とした。次に焼入性あるいは2次硬化特性を向上させるCr,Mo,W,Co等の元素の影響を調査し、7%V鋼を選定した。 2.7%V鋼CD材の機械的性質 7%V鋼CD材を積層したバルク試料を作製し機械的性質を測定した結果、(1)引張強度約1.8GPa、(2)ビッカ-ス硬さ950〜1000の高い2次硬化特性。(3)耐摩耗性は市販高速度鋼SKH51より良好、(4)抗折力は3.4GPa、と耐摩耗性と靱性を共に具備する極めて優れた特性を有することがわかった。 3.実用化の検討 以上の研究成果に基づいて実用化の検討をした。本法の特徴を生かした細径ドリル、薄板メタルソ-等の工具分野あるいはプリンタ-のドットピンなど新しいタイプの工具鋼としての実用化テストを行っている。さらにバルク材についても金型等への応用も検討中である。
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