研究概要 |
核熱エネルギ-の高効率を意図した高温ガス炉においては、その中間熱交換器用として使用される合金の開発が、主要な研究課題であり、1,000℃のクリ-プ破断強度に優れ、鍛造可能という過酷な条件をみたす合金がいくつか提案された。それらはいずれもNi-Cr-W系合金である。 本研究は、この合金系にニオブの添加を行い、高温強度がさらに優れた新合金を開発しようとするものである。62年度においては、数種のNi-Cr-W-Nb系合金を作成し、それらのクリ-プ強度と組織との関連を検討した。63年度にはそれらの検討を踏まえて、クリ-プ破断強度の観点からニオブとタングステン量の最適値を検討して、W量を15及び17Wt%とした2種のNi-20Cr-3Nb-W系合金を提案し、それらの合金のクリ-プ破断強度と組織との関連を検討した。平成元年度においては、両合金が優れたクリ-プ破断強度を示すのはともに粒界析出相による粒界析出強化量が大きいことに起因することを明らかにした。すなわちいずれの合金においても、1,000℃ではタングステンの固溶体α_2相がほぼ結晶粒界のみに析出し、900℃においてはβ相(Ni_3Nb)がまず粒界に析出して、遅れてα_2相の粒界析出が生じ、これらの相による粒界被覆率の増加に対応してクリ-プ抵抗が増加することを明らかにした。さらに、超合金の加速域を拡大させ、また破断延性を高める効果が期待できるボロンとジルコニウムの添加をNi-20Cr合金について試みた結果、ボロンとジルコニウムの添加はいずれも加速域を拡大させ、破断延性を高めることを明らかにした。さらに、そのような効果が生じた機構は、粒界不純物元素を固着させるような従来の考えとは異なり、両元素がともにサブグレイン化を促す効果をもつことに起因するものと結論して、Ni-Cr-W系合金に比べてさらに優れたクリ-プ破断強度を有するNi-Cr-Nb-W系合金の開発が可能であることを指摘した。
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