本研究は既存の構造材料表面に新たな機能を有する複合材料の創製を試みた。複合材料は金属粉末及び炭化物粉末を用い、プラズマ移行ア-ク法、レ-ザ-法などの溶融加工法により作製し、構造用鋼などの基材上に積層接合した。所定の機能はあらかじめ確保すべく、粉末組成の成分設計を行ったが、以下に示す各種試験を行い、併せて複合材料化の金属物理学的検討および複合性を調べた。 (1)Cr系複合材料の耐酸性、純Cr粉末を用い、SS41鋼およびSUS304L鋼を基材とした複合材料は、詳細なTEM解析によりFa-Cr固溶体あるいはFe-Cr固溶体にNiの置換固溶体とCr粉末の末溶融粒子で構成していた。これらの耐酸性は(1)5%沸騰硫酸中6hrs保持後の腐食減量の測定(JISG6591)及び(2)6%沸騰硝酸中48hrs保持後の腐食減量の測定(JISG6573)により調べた。耐酸性はSS41鋼よりSUS304L鋼を基材とした複合材料の方が良好であった。 (2)Cr系複合材料および炭化物分散型複合材料の耐磨耗性;炭化物分散型複合材料はCo基合金などの耐磨耗材料組成のマトリックスにTi炭化物などの高融点炭化物の末溶融粒子が分散分布する構成であった。マトリックスは固溶体と共晶形態であった。これらの耐磨耗性は円盤回転法磨耗試験(ASTMG6581)により詳細した。耐磨耗性は末溶融粒子の存在およびマトリックスの平均自由工程、λmが小なるほど良好であった。 (3)末溶融粒子とマトリックスの密着性;この密着性は3点曲げ靭性試験及び波面解析により調べた。割れは末溶融粒子内で生じ、粒子のマトリックスからの脱落は認められず、密着性が良好であった。 (4)複合合金層と基材との接合性:接合性はプラズマ移行ア-ク法では電流条件など、およびレ-ザ-法では基材の表面処理を適切に選択すると良好であった。
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