研究課題
1.レ-ザ-光の試料表面への入射角度をパソコンでコントロ-ルしながら、反射光強度を自動的に計測し、表面プラズモンポラリトン(SPP)共鳴吸収曲線をパソコンのCRTに瞬時に表示したり、プリンタ-やプロッタ-に出力できる全自動測定装置の製作が完了した。これにより、1つのSPP共鳴吸収曲線のデ-タを、タンパク質試料の測定中の変性を防ぎつつ、採取できるようになった。2.塩化リゾチ-ムの金薄膜への吸着をこの装置を用いて測定した。共鳴角度のシフトを塩化リゾチ-ム水溶液濃度に対してプロットした曲線が、吸着等温線に対応することが分かった。これより、塩化リゾチ-ム濃度が約2(mg/H_2Omg)で、塩化リゾチ-ムは金表面に単分子層吸着していることが分かった。3.SPP共鳴吸収曲線と分散関係を計算する理論を展開した。この理論の特徴は2層膜の振幅反射率を用いて、n層膜の振幅反射率を漸化式を用いて計算するもので、従来の行列形式の理論に比べて計算のスピ-ドが早く、さらに層間での反射過程の物理的内容がよく理解できる点にある。行列形式の理論で計算したSPP共鳴吸収曲線と同じモデルに対して本法を適用し、両者の結果が一致することを確めた。4.我々の理論式を用いて、吸着層の厚みを共鳴角度のシフトと関係づける近似式がどの程度の精度で成立するのか、種々のモデルに対して調べた。この結果、厚みが30Å以上であれば、約10%の誤差で成立すること、80Å位になると20%強の誤差があることが分かった。我々は、昨年までの実験デ-タをこの近似式を使って、SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)の銀への単分子吸着に対して、厚みを15Å、BSA(牛血清アルブミン)の銀への吸着については140Åという値を得てきたが、これらの数値には上述の誤差が含まれている。
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