研究課題
試験研究
研究代表者の鈴木らは、小麦のプロトプラストと酸素電極を用いた簡単なアッセイ系を確立し、コリン系およびコリン類縁体とN-置換グリシン類縁体のいくつかが小麦プロトプラストの光合成を約10-20%促進する事を見いだした。さらに、研究分担者の永井、新井、横山らは、コリン処理によりトマト、甘藷、水稲等の発根及び成育が促進されることを明らかにした。研究分担者の近内は、弱い植物ホルモン活性をコリンが有することを明らかにするとともに、ブラシノライドおよびIAAとコリンとの同時処理によりそれぞれの植物ホルモン活性が増加することも確認した。本研究において、植物の成育と光合成促進活性を有するコリン類縁体とN-置換グリシン類縁体の作用機作を示唆する結果も得られている。鈴木らの代謝実験の結果、コリンはベタインへの代謝とホスホリルコリンからホスファチジルコリンへの代謝を受ける事が判明した。アリルコリンはホスホリルアリルコリンからホスファチジルコリンの代謝だけを受け、ベンジルコリンはなんら代謝を受けないことが明らかになった。この事は、コリンおよびコリン類縁体はその代謝産物が光合成活性を示すのではないことを示唆する。一方,研究分担者の仲本は、C_4回路の酵素に与える影響を調べたが、コリンでは顕著な促進効果は認められなかった。研究分担者の佐藤は、明所下で光合成活性を示す光mixotrophic細胞にコリンを投与した結果、成育促進効果が認められ、これら細胞の光合成電子伝達系も促進されていることを明らかにした。また、鈴木らがATPase(CF1 protein)の活性に与える影響を調べた結果、N-アリルグリシンでは効果は認められなかったが、コリンおよびコリン類縁体処理では約50〜100%の促進効果が認められた。これらの結果は、コリンが光合成の明反応を促進している可能性を示唆する。
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