研究課題
試験研究
本研究に於いて我々は、微量しか入手し得ず、かつ複雑な構造を有する化合物についても良好なデータが得られる測定手段を開発するため、2次元NMRの1次元化を目指した。この際要求されたのは極めて選択性の高い照射磁場であった。種々検討を行なった結果、time sharing gated decoupling(TSD)が最良の手段であることを見出だした。次いでselective population transfer(SPT)が生じないようなパルス系列を考案した結果、極めて選択性の高いNOE実験法(TSD-NOE)の開発に成功した。次に、TSD照射磁場を用いた新しい差スペクトル法である、TSD-COSYおよびTSD-relayed-COSYを開発した。本技術は2次元基本パルス(90°-t_1-90°)の第1パルスの前で、観測したいプロトンを予め選択的に飽和しておいたものと、飽和してないものを測定し、その差を観測するものである。この際、TSDを利用することにより、選択性系を著しく高めることが出来た。さらに照射磁場の強さ、展開時間の長さ等の因子が実験結果に大きく影響することを明らかにし、最適な測定を行なうための諸条件を検討した。次にTSDの応用としてselective HOHAHA-CH法を開発した。この方法の開発により、非常に複雑な化合物の特定のプロトンと関係しているプロトンのスピン結合のみを選択的にとりだすことが可能になり、プロトンシグナルの分離が悪い化合物の構造解析を効率良く行なうことが可能となった。この新手法を新抗生物質であるportmicinの構造決定に応用した。さらに、HMBC(Heteronuclear Multiple Bond Connectivity)を用いることにより、トリテルペン、ポリケタイド物質の^<13>C-NMRの帰属を行い、HMBCが特にメチル基の多い化合物の構造研究に優れていることを示し、この手法を新規抗生物質であるcapuramycinの構造決定にも応用した。
すべて その他
すべて 文献書誌 (11件)